実家のテーブルに、見慣れない封筒が置かれている。
親は「よく分からない書類が来た」と言うだけで、開封した紙をこちらに渡してくる。そこに「認知症のおそれがある」という言葉が見えた瞬間、家族の胸がぎゅっと縮みます。
「これは認知症と決まったということなのか」
「もう運転できないという意味なのか」
「すぐ免許が取り消されるのか」
「病院はどこへ行けばいいのか」
こういう場面では、家族の方が先に焦ります。本人に強く聞きたくなるし、兄弟姉妹にすぐ写真を送りたくなるし、「やっぱり返納した方がいい」と言いたくなるかもしれません。
でも、最初に押さえるべきことがあります。
認知機能検査で「認知症のおそれがある」と判定されたことと、医師により認知症と診断されたことは同じではありません。警察庁も、認知機能検査は受検者の記憶力や判断力の状況を確認するための簡易な手法であり、医師の行う認知症の診断や医療検査に代わるものではないと説明しています。
警察庁の説明では、認知機能検査の結果、「認知症のおそれがある」と判定された場合、公安委員会、つまり警察から連絡があり、臨時適性検査または診断書提出命令により医師の診断を受ける流れになります。認知症であると診断された場合は、聴聞等の手続きを経た上で、免許の取消しまたは効力の停止を受けることになります。
この記事では、「認知症のおそれがある」と判定された後に、家族がまず何を確認するか、どの順番で相談先へつなぐか、本人にどう伝えるかを整理します。
本記事は一般的な情報整理を目的としています。警察庁や都道府県警察が実施する公式検査ではなく、免許更新の結果、認知症の診断、運転可否を判定するものではありません。個別の手続きは、届いた通知書、公安委員会・都道府県警察の案内、医師の指示を確認してください。
まず結論:「認知症のおそれがある」は医師の診断ではない
家族が一番誤解しやすいのは、「認知症のおそれがある」という判定を、そのまま「認知症と確定した」と受け止めてしまうことです。
警察庁の認知機能検査ページでは、検査終了後に採点が行われ、点数に応じて「認知症のおそれがある方」または「認知症のおそれがない方」のいずれかに判定されると説明されています。
そのうえで、「認知症のおそれがある」とされた場合には、公安委員会から連絡があり、臨時適性検査または診断書提出命令により医師の診断を受けることになります。
つまり、家族が最初にすることは、本人に「認知症だ」と告げることではありません。書類の内容を読み、次に必要な手続き、期限、問い合わせ先を確認することです。
本人に伝えるなら、次のようにします。
この書類だけで、家族が病名を決める話ではないよ。
次に医師の診断を受ける流れが書かれているから、
期限と連絡先を一緒に確認しよう。
この一言で、本人が書類を隠したり、病院の話を拒んだりするリスクを少し下げられます。
認知機能検査そのものの項目や当日の流れを確認したい場合は、全体記事も合わせて確認します。
関連記事: 認知機能検査とは?
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判定後のおおまかな流れ
「認知症のおそれがある」と判定された後の流れは、家族が聞き慣れない言葉ばかりです。
おおまかには、次の順番で整理します。
- 認知機能検査を受ける
- 検査終了後に採点される
- 「認知症のおそれがある」と判定される
- 公安委員会、警察から連絡がある
- 臨時適性検査または診断書提出命令により医師の診断を受ける
- 医師の診断結果をもとに、免許手続きが進む
- 認知症であると診断された場合は、聴聞等の手続きを経て免許の取消しまたは効力の停止となる場合がある
この流れを見ると重く感じますが、家族が一度に全部を決める必要はありません。
まず必要なのは、届いた書類に書かれている次の一点です。
次に、いつまでに、どこへ、何を提出・受検するのか
ここが分かれば、家族は動き出せます。
届いた書類で最初に見るところ
本人が書類を受け取ったら、家族は次の順番で確認します。
| 見るところ | 確認する理由 |
|---|---|
| 差出人 | 公安委員会、警察、運転免許センターなどの連絡元を確認する |
| 判定の文言 | 「認知症のおそれがある」など、次の手続きにつながる記載を見る |
| 手続き名 | 臨時適性検査、診断書提出命令など、何を求められているか確認する |
| 期限 | 予約、受診、提出が遅れないようにする |
| 提出先・連絡先 | 分からない点を公式窓口へ確認する |
| 持ち物・必要書類 | 診断書、通知書、本人確認書類などの準備に使う |
ここで、家族LINEに書類の写真を送る場合は注意します。免許証番号、住所、生年月日、医療情報につながる内容が写ることがあります。必要な人だけで共有し、不要な転送は避けます。
離れて暮らす家族なら、本人にこう頼むと進めやすいです。
封筒と1枚目の紙だけ写真で送って。
住所や番号が心配なら、そこは隠して大丈夫。
何をいつまでにするのかだけ一緒に確認したい。
臨時適性検査と診断書提出命令の違い
書類の中で出てきやすいのが、「臨時適性検査」と「診断書提出命令」です。
どちらも、家族が勝手に判断するものではなく、公安委員会や警察の案内に従って進めます。
ざっくり整理すると、次のように考えます。
| 言葉 | 家族側の理解 |
|---|---|
| 臨時適性検査 | 運転に必要な適性について、指定された流れで検査・確認を受ける手続き |
| 診断書提出命令 | 医師の診断を受け、指定された診断書を提出するよう求められる手続き |
ここで注意したいのは、家族が「どちらが軽い・重い」と自己判断しないことです。書類に書かれた期限、受診先、提出先、問い合わせ先を確認し、不明点は運転免許センターや通知書の窓口へ確認します。
本人が「病院なんて行かない」と言う場合でも、最初から説得で押し切ろうとしない方がよいです。
使いやすい言い方:
病名を決めに行くというより、書類で求められている確認を受けに行く流れだよ。
どの病院でいいのか、まず問い合わせ先に確認しよう。
医師の診断を受ける前に家族が準備すること
医師の診断へ進む場合、家族は「何を話せばよいか分からない」と迷います。
準備するものは、できるだけ事実ベースにします。
持っていきたいもの:
- 公安委員会や警察から届いた書類
- 診断書の様式や提出先が分かるもの
- 本人の保険証や診察券
- 服薬中の薬が分かるもの
- 直近の通院状況
- 家族が気になっている日常生活の変化
- 運転中のヒヤリハット記録
- 車の傷や接触、修理の有無
日常生活の変化は、人格評価ではなく出来事として書きます。
避けたい書き方:
父は全然分かっていない。
危機感がない。
認知症だと思う。
使いやすい書き方:
6月以降、通院日を2回間違えた。
同じ薬を飲んだか、夕方に何度も確認する日がある。
5月からスーパーの駐車場で切り返しが増えた。
6月21日、バック駐車で隣の車に近づき、同乗者が声をかけて停止した。
医師に伝える材料は、家族の不安の強さではなく、本人の生活と運転に関する具体的な変化です。
関連記事: ヒヤリハットを記録する方法
本人に言わない方がよい言葉
この段階では、家族の言葉ひとつで本人が手続きを拒むことがあります。
言わない方がよい言葉:
- ほら、認知症だったんだ
- もう運転は無理
- これで免許は終わり
- 返納しないと家族が困る
- 病院でちゃんと認めてもらうから
- 書類を隠しても無駄
これらの言葉は、本人を追い詰めやすくなります。本人が怒るだけでなく、書類を見せない、受診日を忘れたふりをする、家族と話さなくなる、という方向へ進むこともあります。
代わりに使う言葉:
- 書類の期限だけ一緒に確認しよう
- 家族が病名を決める話ではないよ
- 医師に確認してもらう流れだよ
- 病院や買い物に困らない方法も一緒に考えよう
- 分からないところは、運転免許センターに確認しよう
大切なのは、本人の尊厳を守ることです。これは感情論ではなく、手続きを止めないための実務でもあります。
家族が相談先を分ける
「認知症のおそれがある」とされた後は、相談先が一つでは足りないことがあります。
免許の手続き、医療、生活支援を分けて考えます。
| 相談したいこと | 相談先の候補 |
|---|---|
| 免許手続き、書類、期限、提出先 | 通知書の問い合わせ先、都道府県警察、運転免許センター |
| 運転に不安があるが、どう相談すべきか | 安全運転相談窓口、#8080 |
| 認知症や体調、服薬、診断書 | かかりつけ医、指定された医療機関 |
| 通院、買い物、見守り、家族負担 | 地域包括支援センター、自治体窓口 |
警察庁は、安全運転相談窓口について、運転に不安のある高齢ドライバー本人や家族が相談できる窓口として案内しています。全国統一の専用相談ダイヤル #8080 に電話すると、発信場所を管轄する都道府県警察の安全運転相談窓口につながります。
また、厚生労働省は、地域包括支援センターについて、地域の高齢者の総合相談、権利擁護、地域の支援体制づくり、介護予防の援助などを行う中核的な機関として説明しています。
運転免許の手続きは警察・運転免許センター、医療判断は医師、生活の支援は地域包括支援センター。このように役割を分けると、家族が抱え込みにくくなります。
関連記事: 安全運転相談ダイヤル
医師の診断後に考えること
医師の診断後の免許手続きは、公安委員会や警察の案内に従います。家族が先回りして、取消しや停止を断定することは避けます。
警察庁は、認知機能検査で「認知症のおそれがある」とされ、医師の診断で認知症であると診断された場合は、聴聞等の手続きを経た上で、免許の取消しまたは効力の停止を受けることになると説明しています。
この段階で家族が並行して考えるのは、本人の生活です。
確認すること:
- 通院は誰がどう支えるか
- 買い物は週に何回必要か
- 食事や薬の管理に不安はあるか
- 友人や地域活動とのつながりをどう残すか
- 返納や運転休止になった場合、身分証明書はどうするか
- 車の管理、保険、駐車場、売却や廃車は急いで決めなくてよいか
ここで、いきなり車を売る話や見守りサービスの契約話に飛ばない方がよいです。本人から見ると、「免許の話をしていたはずなのに、生活全体を奪われる」と感じやすくなります。
まずは、通院、買い物、薬、家族連絡の4つを整える。車やサービスの話は、その後に分けて考えます。
関連記事: 返納後の生活
兄弟姉妹へ共有するときの文面
離れて暮らす兄弟姉妹へ共有するときは、感情より事実を先にします。
避けたい共有:
やっぱり認知症のおそれありだった。
もう運転は無理だと思う。
早く返納させないと危ない。
共有しやすい文面:
認知機能検査の結果通知で「認知症のおそれがある」と書かれていました。
これは医師の診断とは別で、次に公安委員会・警察の案内に従って医師の診断へ進む流れのようです。
まず、書類の期限、問い合わせ先、受診先を確認します。
あわせて、通院と買い物の移動手段も整理したいです。
この書き方なら、兄弟姉妹が「返納させるかどうか」だけで争う前に、役割分担へ進みやすくなります。
役割分担の例:
- 書類と期限を確認する人
- 本人と病院へ行く人
- 運転免許センターや安全運転相談窓口に確認する人
- 通院・買い物手段を調べる人
- 地域包括支援センターに相談する人
無料体験ナビで確認できること・できないこと
当サイトの無料体験ナビは、認知機能検査の流れを事前に知るための補助です。すでに「認知症のおそれがある」と判定された後に、結果を覆したり、医学的判断をしたりするものではありません。
できること:
- 認知機能検査の項目を家族が理解する
- 本人が検査でどこに緊張しやすかったかを振り返る
- 次の相談先や書類確認の順番を整理する
- 家族会議で、事実と生活準備を分けて話す材料にする
できないこと:
- 公式検査の判定を変更する
- 認知症かどうかを診断する
- 医師の診断に代わる判断をする
- 免許の取消し、停止、更新可否を判定する
無料・登録不要
認知機能検査の流れと家族の確認順を整理する
公式検査ではありません。免許更新の結果、認知症の診断、運転可否を判定するものではなく、制度と流れを理解するための体験コンテンツです。
よくある質問
Q. 「認知症のおそれがある」と判定されたら、認知症と確定ですか?
確定ではありません。警察庁は、認知機能検査は医師の行う認知症の診断や医療検査に代わるものではないと説明しています。「認知症のおそれがある」と判定された場合は、公安委員会からの連絡に従い、臨時適性検査または診断書提出命令により医師の診断へ進む流れになります。
Q. すぐ免許が取り消されますか?
警察庁の説明では、「認知症のおそれがある」とされた場合は医師の診断へ進み、認知症であると診断された場合に、聴聞等の手続きを経た上で免許の取消しまたは効力の停止を受けることになります。個別の流れは届いた書類と公安委員会・都道府県警察の案内を確認してください。
Q. 家族はどの病院へ連れて行けばよいですか?
書類に指定や案内がある場合は、それを優先します。分からない場合は、通知書の問い合わせ先、運転免許センター、かかりつけ医に確認します。診断書の様式や提出先も、自己判断せず公式案内に従ってください。
Q. 本人が受診を嫌がる場合はどうすればよいですか?
最初から「認知症かどうか決めに行く」と言うと拒否感が強くなることがあります。「書類で求められている確認を受けに行く」「期限を確認する」と伝え、本人の生活不安も一緒に聞きます。家族だけで難しい場合は、安全運転相談窓口や地域包括支援センターに相談します。
Q. 返納の話も同時にした方がよいですか?
急いで結論を迫るより、まず書類、期限、医師の診断、通院や買い物の移動手段を整理します。返納や運転休止については、本人の生活準備、安全運転相談窓口、医師、家族の支援体制を合わせて考えてください。
Q. 結果が出た後に無料体験ナビを使う意味はありますか?
公式検査の判定を変えることはできません。ただ、家族が検査項目や手続きの流れを理解し、本人との会話や相談先への説明を整理する材料として使うことはできます。
まとめ
認知機能検査で「認知症のおそれがある」と判定された後、家族が最初にすることは、本人に認知症だと告げることではありません。届いた書類を見て、手続き名、期限、提出先、問い合わせ先を確認することです。
警察庁の説明では、「認知症のおそれがある」と判定された場合、公安委員会から連絡があり、臨時適性検査または診断書提出命令により医師の診断を受ける流れになります。認知症であると診断された場合は、聴聞等の手続きを経た上で免許の取消しまたは効力の停止を受けることになります。
ただし、検査結果は医師の診断そのものではありません。家族は、免許手続き、医療、生活支援を分けて考え、運転免許センター、安全運転相談窓口、かかりつけ医、地域包括支援センターなどにつなげます。
本人を責めるより、期限を守り、書類をそろえ、通院と買い物の手段を整える。その順番が、家族にも本人にもいちばん現実的です。
参考情報
- 警察庁「認知機能検査について」: https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/ninchi.html
- 警察庁「安全運転相談窓口について」: https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/conferennce_out_line.html
- 警察庁「高齢運転者対策の概要」: https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/pdf/r08_koureiuntengaiyou.pdf
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/index.html
執筆・編集情報
- 執筆・編集: 親の運転相談室 運営者
- 専門資格者による個別監修: なし
- 主な確認先: 警察庁、厚生労働省
- 最終確認日: 2026年6月22日
本記事は一般的な情報整理を目的としており、個別の運転可否、医学的診断、法的判断を行うものではありません。

