親が75歳を迎えると、これまでの免許更新とは手続きが大きく変わります。更新のハガキが届いてから、認知機能検査・高齢者講習・(人によっては)運転技能検査と、いくつかの段階を順番に通っていく必要があり、はじめてだと「何から予約すればいいのか」「検査で何を見られるのか」「結果が悪かったらどうなるのか」が分かりにくいものです。
この記事では、75歳以上の免許更新の全体像を、警察庁が公表している制度に沿って順を追って整理します。特に、家族が混乱しやすい「認知機能検査の中身」と「『認知症のおそれ』と判定されたあとの流れ」、そして家族が手伝える場面に絞って説明します。手数料や対象になるかどうかの最終確認は、お住まいの都道府県警察・運転免許センターの窓口で行ってください(金額は地域や会場で異なる場合があります)。
75歳以上の免許更新は、通知書から四つを振り分ける
更新期間満了日の年齢が75歳以上なら、認知機能検査と高齢者講習が必要です。さらに、普通自動車を運転できる免許を持ち、基準日前3年間に一定の違反歴がある方は運転技能検査も対象になります。家族は「75歳だから全員同じ」と考えず、届いた通知書に書かれた対象手続を先に確認してください。
| 確認するもの | 確認内容 | 家族が記録すること |
|---|---|---|
| 高齢者講習等受講通知書 | 必要な検査・講習、予約先、実施場所 | 予約日、会場、受付時間 |
| 認知機能検査 | 手がかり再生と時間の見当識、結果通知 | 受検日、判定、次の案内 |
| 運転技能検査 | 通知書に対象と記載されているか | 受検日、証明書の保管場所 |
| 高齢者講習 | 実車指導あり2時間か、なし1時間か | 終了証明書の保管場所 |
| 更新連絡書 | 更新場所、期間、必要書類 | 最終の更新手続日 |
家族用の予約カード
- 免許の有効期限
- 通知書に書かれた検査・講習名
- 予約日時と会場までの往復方法
- 当日の持ち物、眼鏡・補聴器などの条件
- 終了証明書と結果通知書の保管場所
検査・講習の実施順序や予約方法は都道府県によって異なる場合があります。神奈川県警察は、2026年7月30日更新の案内で、対象者へ満了日のおおむね6か月前に通知書を郵送し、通知後に予約する流れを案内しています。全国共通の制度と、住所地の予約方法を分けて確認してください。
認知機能検査は医師の診断や医療検査の代わりではありません。結果が「認知症のおそれがある」場合は、公安委員会からの連絡に従って臨時適性検査または診断書提出へ進みます。家族だけで病名や運転可否を決めないことが重要です。
確認日:2026年7月31日。参照:警察庁「認知機能検査について」、警察庁「高齢者の運転免許証の更新制度」、神奈川県警察「75歳以上の方の運転免許更新手続」。
75歳以上の免許更新は「検査と講習」が更新の前提になる
74歳までの更新と75歳以上の更新の最大の違いは、更新手続きそのものの前に受けておかなければならない検査・講習があることです。警察庁の説明では、更新期間が満了する日の年齢が75歳以上の方は、認知機能検査を受けたうえで高齢者講習を受講し、それが済んでから更新の申請に進む、という順序になります(出典:警察庁「認知機能検査について」)。
つまり、誕生日の少し前に免許センターへ行けば更新できる、という従来の感覚のままでいると、「検査を受けていないので今日は更新できません」と言われてしまうことがあります。検査・講習はいずれも予約制で、地域によっては希望日まで数週間〜1か月以上待つこともあるため、ハガキが届いたら早めに動くことが、この更新でいちばん大事なポイントです。
全体の流れ(おおまかな順番)
- 更新のお知らせ(ハガキ)が届く
- 認知機能検査を予約して受ける
- 高齢者講習を予約して受ける(実車指導を含む場合がある)
- 一定の違反歴がある人は、運転技能検査も受ける
- これらを済ませたうえで、運転免許センター等で更新の申請をする
なお、受ける順番は地域や対象者によって扱いが異なります。たとえば神奈川県警の案内では従来「認知機能検査→高齢者講習」の順とされる一方、警視庁の案内では、一定の時期以降に75歳を迎える方について認知機能検査・高齢者講習・運転技能検査の受検・受講の順番は問わないとされています(出典:警視庁「認知機能検査と高齢者講習」)。どの順で予約すべきかは、届いたハガキの記載とお住まいの都道府県警察の案内に従ってください。
更新のお知らせ(ハガキ)はいつ届くか
75歳以上の更新では、検査と講習の予約をする必要があるため、案内のハガキは一般の更新より早めに送られてきます。警視庁は、遅くとも有効期間満了日の6か月前までには手元に届くように発送していると案内しています(出典:警視庁)。一方で、神奈川県警のように「誕生日の約1か月前に更新連絡書を郵送」と案内している地域もあり、ハガキの種類や届く時期は自治体によって差があります(出典:神奈川県警察「75歳以上の方の運転免許更新手続」)。
ここで家族にお願いしたいのは、ハガキを「ただの更新案内」と見て放置しないことです。検査会場や教習所の所在地・電話番号・休業日が書かれていることが多く、これが予約のスタート地点になります。親が一人暮らしの場合は、帰省や電話のついでに「免許のハガキ、もう届いてる?」と一度確認しておくと、予約の出遅れを防げます。万一ハガキが見当たらない・届かないときの対処は、姉妹記事の免許更新通知が届かない場合を参照してください。
認知機能検査では何を見るのか(2つの検査)
認知機能検査は、記憶力と判断力の状態を確認するための簡易な検査で、内容は「手がかり再生」と「時間の見当識」の2つで構成されます(出典:警察庁「認知機能検査について」)。運転の実技ではなく、紙と筆記での検査です。
手がかり再生
警察庁の説明では、手がかり再生は「一定のイラストを記憶し、採点には関係しない課題を行った後、記憶しているイラストをヒントなしに回答し、さらにヒントを基に回答する」という流れの検査です。先にいくつかのイラストを覚え、別の作業をはさんだあとに、まず何も見ずに思い出して書き、その後「ヒント」を手がかりにもう一度思い出して書く、という二段構えになっています。日常の物忘れと違い、いったん別の課題を挟んでから思い出す力を見る点が特徴です。
時間の見当識
時間の見当識は「検査時における年月日、曜日及び時間を回答する」検査です。いま自分が置かれている時を正しく認識できているかを確認するもので、検査の場で「今日は何年何月何日か」「何曜日か」「だいたい何時ごろか」を答えて記入します。
検査時間そのものについて警察庁は分単位の所要時間を公表していませんが、内容としてはこの2項目に限られます。事前にイラストの種類を丸暗記しておくような対策をするものではなく、家族としては「落ち着いて受ければ大丈夫」と伝え、検査の前日に睡眠と体調を整えられるよう支える程度で十分です。検査項目のより詳しい解説は、姉妹記事の認知機能検査とはでも扱っています。
結果の区分と「認知症のおそれ」という言葉の正確な意味
認知機能検査の結果は、2つの検査の点数を計算式に当てはめて出した総合点で区分されます。警察庁が公表している採点方法では、総合点は「2.499×手がかり再生の点+1.336×時間の見当識の点」で算出し、総合点が36点未満なら「認知症のおそれがある者」、36点以上なら「認知症のおそれがない者」と判定されます(出典:警察庁「認知機能検査 採点方法」)。
ここで家族が必ず正しく理解しておきたいのは、「認知症のおそれがある」という判定は、認知症の診断ではないということです。これはあくまで検査の区分であり、診断は医師が行うものです。検査結果と医師の診断は別物であり、家族や本人がこの点数だけで「認知症だ」と決めつけるべきではありません。
| 総合点 | 判定区分 | このあとの扱い |
|---|---|---|
| 36点以上 | 認知症のおそれがない者 | 高齢者講習を受けて更新手続きへ進む |
| 36点未満 | 認知症のおそれがある者 | 公安委員会から連絡があり、医師の診断を受ける流れになる |
「認知症のおそれがある」と判定された場合の制度上の流れ
総合点が36点未満で「認知症のおそれがある者」と判定された場合、すぐに免許がなくなるわけではありません。警察庁は、この場合公安委員会から連絡があり、臨時適性検査(専門医の診断)を受けるか、または診断書提出命令により医師の診断書を提出することになると説明しています(出典:警察庁「認知機能検査について」)。
そのうえで、医師の診断の結果として認知症と判定された場合に、聴聞などの手続きを経て免許の取消し又は効力の停止となる、というのが制度上の順序です。逆にいえば、検査で「おそれがある」と出ても、医師の診断で認知症ではないと判断されれば、運転を続けられる場合があります。実際に警察庁のQ&Aでも、「認知症のおそれがある」と判定されても直ちに運転免許が取り消されるわけではありませんと明記されています(出典:警察庁「認知機能検査 Q&A」)。
家族の役割は、ここで親を問い詰めたり、点数を責めたりすることではありません。「公安委員会から連絡が来たら、その案内に沿って医師の診断を受ける段取りを一緒に考える」——これが家族にできる現実的な支えです。かかりつけ医がいる場合の伝え方は、姉妹記事のかかりつけ医へ相談するときの伝え方が参考になります。判定後の手続きをさらに詳しく追いたい場合は、認知症のおそれがあると判定された後の流れを確認してください。
検査は何回でも受けられる
もう一つ家族に知っておいてほしいのが、認知機能検査は何回でも受けることができるという点です(出典:警察庁「認知機能検査 Q&A」。ただし受けるたびに手数料が必要)。体調が悪い日にたまたま低い点数が出た、という不安がある場合でも、一度の結果がすべてを決めるわけではありません。この事実を知っているだけで、本人も家族も必要以上に身構えずに検査に臨めます。
高齢者講習と、人によって加わる運転技能検査
認知機能検査と並んで、75歳以上の更新では高齢者講習の受講が必要です。座学に加えて、自動車を実際に運転する実車指導が含まれる場合があります。所持している免許の種類によって時間や手数料が異なり、神奈川県警の案内では、実車指導ありの高齢者講習が6,600円・2時間、原付などのみの方向けの実車指導なしが2,950円・1時間とされています(出典:神奈川県警察)。講習の中身は姉妹記事の高齢者講習では何をする?で詳しく説明しています。
さらに、75歳以上の方のうち一定の違反歴がある人には、これらに加えて運転技能検査(実車試験)が課されます。警察庁は対象を「75歳以上で、一定の違反歴がある方」とし、対象となるのは免許の有効期間満了日の160日前までの過去3年間における信号無視・速度超過・横断歩行者等妨害など定められた違反類型に該当した場合だと説明しています(出典:警察庁「運転技能検査について」)。
運転技能検査は実際にコースで普通自動車を運転して一時停止などの課題を行い、運転行為の危険性に応じて100点満点からの減点方式で採点されます。第一種免許では70点以上、第二種免許では80点以上が合格の目安とされ、合格できない場合は更新そのものを受けられなくなります(出典:警察庁)。対象になるかどうかの判断や、不合格だった場合の扱いは、姉妹記事の運転技能検査が必要になる違反歴と運転技能検査に不合格だった場合で詳しく扱っているため、ここでは「自分の親が対象かどうかはハガキと窓口で確認する」とだけ押さえてください。
予約が取りにくい問題と、家族にできる支え
75歳以上の更新で多くの家族がつまずくのが、検査と講習の予約です。神奈川県警も、実施場所が少ない地域などでは予約が取りにくくなっていますと明記しています(出典:神奈川県警察)。検査・講習・(該当者は)運転技能検査をすべて有効期間満了日までに終えておく必要があるため、予約が後ろ倒しになると、最悪の場合「期限内に間に合わない」事態になりかねません。
予約がなぜ後ろ倒しになりやすいかというと、認知機能検査と高齢者講習は別々に予約することが多く、しかも高齢者講習は実車指導のために定員が小さく設定されているからです。さらに運転技能検査の対象者は、その分も含めて複数回の来場・予約が必要になります。一つひとつは数十分〜2時間程度でも、予約待ちと移動を合わせると更新までに想像以上の日数がかかる、という構造を家族が理解しておくと、「なぜそんなに早く動く必要があるのか」を本人にも説明しやすくなります。
家族が手伝えることは、次のように具体的です。
- ハガキが届いたら、記載の電話番号ですぐに予約の電話を入れる(親が電話を苦手にしている場合は、本人の同意を得たうえで家族が代わりに問い合わせる)
- 会場が一つしか取れない前提にせず、近隣の複数会場の空き状況を聞いておく
- 運転技能検査が必要かどうかを、予約の電話のついでに確認しておく
- 検査・講習の日は、できれば送迎や付き添いを計画しておく(慣れない会場への移動自体が負担になるため)
- 当日必要な持ち物(ハガキ・現在の免許証・手数料・眼鏡など)を前日に一緒に確認する
予約がどうしても取れないときの動き方は、姉妹記事の高齢者講習の予約が取れない場合にまとめています。
結果が出たあと、家族が確認すること
検査と講習が終わり、無事に更新できたとしても、そこで終わりにしないことをおすすめします。75歳以上の更新は、運転を続けるかどうかを家族で一度立ち止まって考えるよい機会でもあるからです。結果が出たあとに確認しておきたいことを整理します。
- 次の更新時期を家族で共有する——75歳以上は更新のたびに検査・講習が必要です。次回も早めに動けるよう、有効期限を家族のカレンダーにも控えておきます。
- 検査結果に一喜一憂しすぎない——「認知症のおそれがない」と出ても、それは現時点の検査区分にすぎません。日常の運転で気になる場面が増えていないか、ふだんの様子を見ておくことのほうが大切です。
- 「おそれがある」と出た場合は、案内に沿って医師の診断の段取りを一緒に進める——家族が認知症かどうかを判断するのではなく、医師の診断につなぐ役に徹します。
- 運転に不安があるなら、早めに公的な相談窓口を使う——加齢に伴って運転に不安が出てきた高齢ドライバーやその家族は、全国共通の安全運転相談ダイヤル「#8080」に電話すると、発信地を管轄する都道府県警察の安全運転相談窓口につながります(受付は原則として平日の執務時間内。出典:警察庁「安全運転相談窓口について」)。相談の進め方は安全運転相談ダイヤル#8080でも解説しています。
更新できたからといって「これで安心」と話を打ち切るのではなく、また更新できなかった・更新を迷うとなったときも、運転を続けるか・どう続けるかを家族で話し合うきっかけにしてください。話し合いの進め方は家族会議の進め方を、制度の流れを手を動かしながら理解したい場合は認知機能検査の体験コンテンツを参考にしてください(体験コンテンツは公式検査ではなく、免許更新の結果・認知症の診断・運転可否を判定するものではなく、制度と流れを理解するためのものです)。
よくある疑問
認知機能検査で点数が低いと、その場で免許を取り上げられますか?
いいえ。総合点が36点未満で「認知症のおそれがある」と判定されても、その場で免許がなくなることはありません。警察庁のQ&Aでも、この判定で直ちに免許が取り消されるわけではないと明記されています。公安委員会からの連絡を受けて医師の診断を受け、その診断結果に基づいて手続きが進みます(出典:警察庁「認知機能検査 Q&A」)。
検査に落ちたら、もう受け直せないのですか?
認知機能検査は何回でも受けることができます(受けるたびに手数料が必要)。体調などでうまくいかなかった場合でも、一度の結果ですべてが決まるわけではありません(出典:警察庁「認知機能検査 Q&A」)。
手数料はいくらかかりますか?
地域や会場(警察施設か教習所か)によって異なります。神奈川県警の案内では認知機能検査が1,050円、高齢者講習が実車指導あり6,600円・実車指導なし2,950円、運転技能検査が3,650円とされています(出典:神奈川県警察)。教習所で受ける場合は施設ごとに異なるため、正確な金額は予約時に確認してください。
家族が「もう運転は危ないのでは」と感じています。どこに相談すればいいですか?
運転に不安のある高齢ドライバーやその家族は、全国共通の安全運転相談ダイヤル「#8080」で、お住まいの地域の都道府県警察の安全運転相談窓口に相談できます(受付は原則平日の執務時間内)。健康面が心配な場合はかかりつけ医にも相談できます。家族だけで「運転できる・できない」を判断するのではなく、こうした公的な窓口や医師につなぐことが、本人にとっても家族にとっても安全です。
参考にした公的情報
確認日:2026年6月28日
関連ページ
執筆・編集:親の運転相談室 運営者
本記事は一般的な情報整理を目的としており、専門資格者による個別の監修は受けていません。具体的な手続き・制度・診断・運転可否の判断は、各公式窓口や専門機関でご確認ください。

