免許返納には「何歳になったら必ず返す」という全国一律の年齢はありません。警察庁の令和7年版運転免許統計によると、2025年中の申請による運転免許の取消件数は43万5,067件で、そのうち75歳以上は26万915件、全体の60.0%でした。
警察庁の累計値から5歳刻みの件数を計算すると、最も多いのは70歳から74歳の11万4,038件です。次いで80歳から84歳が10万174件、75歳から79歳が9万1,893件でした。ただし、この数字は「70歳になったら返すべき」という意味ではありません。返納を決める事情には、運転の変化、健康状態、家族の心配、地域の交通、通院・買い物、車の必要性などがあります。
この記事では、最新の公表統計から年齢別の返納状況を読み解き、年齢を結論ではなく、家族で運転と生活を見直すきっかけとして使う方法を整理します。
本記事は統計と一般的な判断材料を整理するものです。特定の年齢だけを理由に、運転継続や免許返納を決めるものではありません。運転に具体的な不安がある場合は、医師、都道府県警察の安全運転相談窓口、地域包括支援センター等へ相談してください。
先に結論:75歳以上が60%、5歳区分では70~74歳が最多
警察庁「運転免許統計 令和7年版」の「申請による運転免許の取消件数の年別推移」には、総数と、65歳以上、70歳以上、75歳以上、80歳以上、85歳以上の累計件数が掲載されています。
2025年の公表値は次のとおりです。
| 区分 | 申請取消件数 | 全体に占める構成率 |
|---|---|---|
| 全年齢 | 435,067 | 100.0% |
| 65歳以上 | 413,330 | 95.0% |
| 70歳以上 | 374,953 | 86.2% |
| 75歳以上 | 260,915 | 60.0% |
| 80歳以上 | 169,022 | 38.8% |
| 85歳以上 | 68,848 | 15.8% |
この表から分かるのは、申請取消しの大部分が高齢者によるものですが、75歳未満で返納する人も相当数いるということです。
5歳刻みで見ると何歳が多いか
警察庁の表は累計値なので、隣り合う累計件数を差し引くことで5歳区分の件数を求められます。当サイトで計算した結果は次のとおりです。
| 年齢区分 | 算出方法 | 件数 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|---|
| 64歳以下 | 全体-65歳以上 | 21,737 | 5.0% |
| 65~69歳 | 65歳以上-70歳以上 | 38,377 | 8.8% |
| 70~74歳 | 70歳以上-75歳以上 | 114,038 | 26.2% |
| 75~79歳 | 75歳以上-80歳以上 | 91,893 | 21.1% |
| 80~84歳 | 80歳以上-85歳以上 | 100,174 | 23.0% |
| 85歳以上 | 公表値 | 68,848 | 15.8% |
※割合は小数第2位を四捨五入しているため、合計が100%と一致しない場合があります。申請による一部取消しは警察庁統計の対象外です。
最も多い5歳区分は70~74歳です。ただし、75~79歳と80~84歳もそれぞれ9万件を超えています。「多くの人が返納した年齢」と「自分の親が返納する時期」は一致するとは限りません。
「平均年齢」と「何歳が多い」は違う
検索では「免許返納の平均年齢」がよく調べられます。しかし、最新の全国統計に平均年齢が直接掲載されているとは限りません。累計年齢区分から、おおよその中心を推測することはできても、個々の正確な年齢がなければ厳密な平均は計算できません。
過去の警察庁委託調査では、75歳以上の自主返納者を対象としたアンケート回答者の平均年齢として80.2歳という数字があります。ただし、これは2015年度の特定調査の回答者平均であり、現在の全国の自主返納者全員の平均年齢ではありません。
したがって、本記事では「全国平均は80.2歳」とは断定しません。最新の2025年統計から確実に言えるのは、次の点です。
- 申請取消しの95.0%が65歳以上だった。
- 86.2%が70歳以上だった。
- 60.0%が75歳以上だった。
- 5歳区分では70~74歳が最も多かった。
- 80~84歳も10万174件と多かった。
なぜ70~74歳の件数が多いのか
統計だけから、個人が返納した理由を断定することはできません。考えられる背景として、70歳以上の免許更新では高齢者講習が必要になり、運転や生活を見直す機会が増えることがあります。また、退職、車の買い替え、家族構成の変化、通院、家族からの助言などが重なる時期でもあります。
しかし、「講習があるから返納した」「家族に言われたから返納した」と統計から因果関係を読み取ることはできません。返納の理由を知りたい場合は、別のアンケート調査や本人の事情を確認する必要があります。
数字は「何歳で返すべきか」を決める命令ではなく、70代前半から運転と生活を見直す家庭が多いことを知る参考として使います。
75歳は制度が変わる節目だが、返納年齢ではない
更新期間満了日の年齢が75歳以上になると、免許更新前に認知機能検査が必要です。一定の違反歴がある方は運転技能検査の対象にもなります。
75歳という数字は更新制度上の節目ですが、自動的に免許を返納する年齢ではありません。認知機能検査で「認知症のおそれなし」でも運転上の危険がないと保証されるわけではなく、反対に、家族が年齢だけで返納を迫るのも適切ではありません。
75歳が近づいたら、返納するかを一度で決めるのではなく、次の二つを同時に進めます。
- 免許更新に必要な検査・講習・予約を確認する。
- 運転を減らす場合に生活がどう変わるかを試す。
75歳以上の免許更新ガイドでは、認知機能検査、高齢者講習、運転技能検査の流れを整理しています。
年齢より先に確認したい運転の変化
返納時期を考えるときは、年齢だけでなく、具体的な出来事を確認します。
| 観察すること | 家族が記録する例 |
|---|---|
| 道に迷う | 通い慣れた店への道を間違えた日と場所 |
| 車の傷 | 傷の位置、本人の説明、同じ場所で繰り返していないか |
| 信号・標識 | 一時停止を通り過ぎた、右左折禁止に気づかなかった |
| 車線・速度 | ふらつき、極端な低速、合流への強い不安 |
| 操作 | ペダル、シフト、ウインカーの迷い |
| 体調 | 眠気、めまい、視力、補聴器、服薬後の変化 |
| 家族との会話 | 指摘すると強く怒る、出来事を覚えていない |
一度の失敗だけで運転可否を断定せず、日時、道路状況、体調を記録します。緊急性がある場合は、記録が十分にたまるのを待たず警察や医療機関へ相談してください。
返納前に生活を試す
本人が返納をためらう理由は、運転への自信だけではありません。通院、買い物、仕事、家族の送迎、畑、墓参り、友人との交流など、車が生活の役割を支えています。
返納を決める前に、1週間または1か月だけ車を使わない日を作り、次を記録します。
- 通院は誰が、どの交通手段で支えたか。
- 食料と日用品は何日ごとに必要か。
- タクシー代は月いくらになりそうか。
- バスの停留所まで歩けるか。
- 家族送迎を固定曜日にできるか。
- 宅配、移動販売、オンライン診療を使えるか。
- 外出や人との交流が減らないか。
この試行で困った点を先に直せば、返納後の後悔を減らせます。免許返納後の買い物・通院・移動手段も参考にしてください。
70代前半から考える三段階
段階1:情報を集める
高齢者講習、認知機能検査、運転経歴証明書、地域の返納支援を調べます。返納をまだ決めなくても構いません。
段階2:運転条件を狭める
夜間、雨天、高速道路、長距離、混雑時間帯を避けるなど、本人と相談して運転範囲を小さくします。家族が一方的に制限するのではなく、次に見直す日を決めます。
段階3:車なし生活を試す
通院日、買い物日、趣味の日を一度ずつ、本人が運転しない方法で試します。困ったことを記録し、代替手段を組み直します。
この三段階を踏むと、「80歳になったら突然返納」のような一日だけの決断になりにくくなります。
家族が年齢を持ち出すときの注意
避けたい言葉は、「もう80歳なんだから、普通は返すよ」です。統計を多数決のように使うと、本人は年齢だけで能力を否定されたと感じます。
代わりに、次のように具体的な出来事と生活準備を話します。
- 「何歳だからではなく、先週の右折で二人とも怖かったことを相談したい」
- 「次の更新までに、通院だけ家族送迎で試してみない?」
- 「返納するかは今日決めず、車なしの日に困ることを一緒に調べよう」
- 「第三者の意見も聞けるように、#8080へ相談してみよう」
統計は会話を始める背景にはなりますが、本人を追い込む証拠には使わないでください。
自主返納件数は増減している
警察庁統計では、申請取消件数は年によって大きく変動しています。2019年は60万1,022件、2023年は38万2,957件、2024年は42万7,914件、2025年は43万5,067件でした。
この増減を、単純に「高齢者の安全意識が上がった・下がった」と評価することはできません。高齢者人口、免許保有者数、制度、社会状況、地域交通など複数の要因が関係します。
家族に必要なのは全国件数の予測ではなく、本人の次の更新時期と生活条件です。統計は毎年更新されるため、この記事も警察庁の新しい運転免許統計が公表された際に確認します。
何歳で相談するべきか
相談に年齢の下限はありません。次の状況があれば、返納を決めていなくても相談できます。
- 本人が運転に不安を感じ始めた。
- 家族が同乗して怖いと感じた。
- 病気や薬が運転に影響しないか心配。
- 車の傷、道迷い、違反が増えた。
- 本人と家族だけでは話し合いが進まない。
- 返納後の生活が成り立つか分からない。
安全運転相談ダイヤル#8080は、高齢運転者本人だけでなく家族も相談対象です。通話料、受付時間、電話前にまとめることは、#8080の使い方で確認できます。
年齢別件数を家族の結論に使わない
年齢別の自主返納件数は、家族が話し合いを始める目安にはなりますが、「多くの人が返している年齢だから、親も返すべき」という根拠にはなりません。件数には各年齢層の免許保有者数、健康状態、生活圏の交通事情、家族構成、制度の周知状況などが影響します。
また、返納者全体に占める割合と、その年齢の免許保有者のうち返納した割合は別の数字です。本記事の60%は、2025年の自主返納件数43万5,067件のうち75歳以上が占める割合であり、75歳以上の免許保有者の60%が返納したという意味ではありません。
統計を本人に見せるときは、結論を迫る材料ではなく、次の質問を始める資料として使います。
- 夜間や雨の日の運転を減らせるか
- 通院、買い物、仕事で車が必要な日は週に何日か
- 家族送迎、タクシー、バス、宅配を組み合わせると生活できるか
- 運転を休む期間を先に試せるか
- 免許更新の検査・講習と、日常の安全確認を分けて考えられるか
年齢だけでは結論が出ないからこそ、運転の変化と車のない生活の両方を具体化することが必要です。統計はその会話を始める入口として扱ってください。
70代・80代で家族が確認したいこと
70~74歳は生活の棚卸しを始める
この時期は高齢者講習の対象となりますが、講習を受けることと返納を決めることは別です。更新案内が届いたら、通院、買い物、仕事、趣味、家族の送迎など、車を使う用事を一週間単位で書き出します。夜間、雨天、高速道路、知らない道など、本人が負担に感じる条件があれば、まずその条件だけを減らす方法も考えます。
家族は「まだ70代前半だから大丈夫」と先送りせず、車がなくても一日過ごせる日を試します。実際にバスへ乗る、タクシーを予約する、配達を使うことで、時刻表だけでは分からない費用や不便が見えてきます。
75~79歳は制度上の手続と日常の変化を分ける
75歳以上の更新では認知機能検査が関係し、一定の違反歴がある人は運転技能検査の対象となります。検査の判定だけで家族の心配がすべて解消するわけではありません。結果がどうであっても、道迷い、接触、急な操作、同乗者の不安など、日常の事実は別に確認します。
返納を考える場合は、本人が最も困る用事を一つ選び、代替手段を先に確保します。「免許を返したら考える」ではなく、通院なら病院送迎、買い物なら宅配や移動販売というように、返納前から試すことが重要です。
80歳以上は年齢だけで一律に決めない
80歳以上でも生活環境と健康状態は人により異なります。一方で、家族が気になる変化を「年齢のせい」として見過ごすことも避けます。本人の自尊心に配慮しながら、運転範囲、時間帯、同乗者、過去半年の出来事を具体的に確認します。
車が生活を支えている地域では、返納の話だけを先にすると本人が孤立を恐れます。地域包括支援センター、自治体の交通支援、家族送迎、タクシー、宅配などを組み合わせ、外出回数を維持できる案を示します。
どの年代でも、事故が起きるまで待つ必要はありません。返納を即決しなくても、相談、運転条件の縮小、車なし生活の試行は今から始められます。年齢別件数は、その準備を先送りしないための参考として使ってください。
よくある質問
免許返納に決められた年齢はありますか?
ありません。加齢に伴う不安などから、本人が自主的に返納する制度です。年齢だけでなく、運転の変化と生活準備を確認します。
何歳の返納が最も多いですか?
2025年の警察庁の累計公表値を5歳区分に計算すると、70~74歳が11万4,038件で最も多く、次いで80~84歳が10万174件でした。
全国の平均年齢は何歳ですか?
令和7年版運転免許統計は年齢以上の累計件数を掲載していますが、全国の平均年齢を直接示していません。古い特定調査の平均を現在の全国平均として扱わないよう注意が必要です。
75歳になったら返納しなければいけませんか?
75歳は認知機能検査など更新制度上の節目です。自動的な返納年齢ではありません。通知書に従って必要な検査・講習を確認します。
家族は何歳から話を始めるべきですか?
70歳以上の高齢者講習を、運転と生活を見直すきっかけにできます。ただし、年齢を理由に迫るのではなく、具体的な運転の変化と代替手段から話します。
まとめ
2025年の申請による運転免許の取消件数は43万5,067件で、75歳以上が60.0%でした。累計値から計算した5歳区分では、70~74歳が最も多く、80~84歳、75~79歳が続きます。
それでも、返納すべき年齢が決まっているわけではありません。統計は70代前半から見直す家庭が多いことを知る材料として使い、本人の運転の変化、健康、地域交通、返納後の生活を一緒に確認してください。
参考情報
最終確認日:2026年7月17日 執筆・編集:親の運転相談室編集部 統計表の5歳区分は、警察庁の累計値を当編集部が差し引いて算出しました。

