相談前は、この3つだけ整理
地域包括支援センターは運転可否を判定する場所ではありません。家族だけで抱えず、事実・担当窓口・返納後の暮らしの順に確認します。
日時・場所・本人の説明を短く残します。
市区町村名と地域包括支援センターで公式窓口を確認します。
通院・買い物・見守りの困りごとも伝えます。
「親の運転、どこに相談すればいいのか分からない」その入口になる場所
親の運転が心配になったとき、多くのご家族が最初につまずくのが「そもそも誰に相談すればいいのか」という点です。警察に電話するほどの事故はまだ起きていない。病院に連れて行こうにも、本人が嫌がる。かといって家族だけで抱え込むと、毎回の通院や買い物の送り迎えで疲れてしまう——。
こうしたとき、相談先の一つになるのが地域包括支援センターです。名前は聞いたことがあっても、「介護が必要になってから行く場所」「うちの親はまだ元気だから関係ない」と思っている方は少なくありません。実際には、まだ介護認定を受けていない段階の高齢者やそのご家族も使える、地域の高齢者向け総合相談窓口です。
ただし、ここで一つはっきりさせておきたいことがあります。地域包括支援センターは、「運転を続けてよいか」「免許を返納すべきか」を判定する場所ではありません。運転免許そのものの可否や認知症の診断は、警察や医療機関の役割です。地域包括支援センターが力になれるのは、その前後にある「運転をやめたあとの生活をどう支えるか」「どの専門機関につなげばよいか」といった、暮らしと制度の部分です。この記事では、その役割分担を整理したうえで、相談前に何を準備し、どう使えばいいのかを具体的に説明します。
地域包括支援センターとは何か
地域包括支援センターは、介護保険法にもとづいて市町村が設置している、高齢者のための総合相談窓口です。厚生労働省は、これを「地域包括ケア実現に向けた中核的な機関」と位置づけ、地域の高齢者の総合相談、権利擁護、介護予防の援助などを担うと説明しています(厚生労働省「地域包括ケアシステム」)。
同省の資料によれば、全国の市町村に設置されており、令和7年4月時点で全国に約5,487か所(ブランチ等を含めると約7,374か所)あります。つまり、お住まいの地域にも必ず担当のセンターが存在します。
誰が使えるのか、費用はかかるのか
対象は、おおむね65歳以上の高齢者と、その方を支えるご家族・地域の方です。詳しい対象範囲は自治体によって運用が異なるため、お住まいの市町村で確認してください。重要なのは、まだ要介護認定を受けていなくても利用できるという点です。たとえば埼玉県は「高齢者とそのご家族の方であれば、要介護認定を受けていなくても利用可能です」「相談料は無料です」と明記しています(埼玉県「地域包括支援センター」)。
「親はまだ自分で運転できているし、介護とは関係ない」という段階こそ、実は相談に向いています。問題が深刻になってからではなく、心配が芽生えた早い段階で一度つないでおくほうが、その後の選択肢が広がるからです。
本人が行かなくても、家族だけで相談できる
多くのご家族が誤解しているのが、「本人を連れて行かないと相談できない」という点です。実際には、離れて暮らす子どもが親の様子を心配して、家族だけで相談に行くケースは珍しくありません。電話での相談に対応しているセンターも多く、まずは「最近、親の運転や生活が心配で」という入口から話を始められます。
運転や返納について、地域包括支援センターは何を支援してくれるのか
ここが、この記事でもっとも誤解されやすい部分です。役割を「できること」と「ここではしないこと」に分けて整理します。
ここではしないこと(役割分担の確認)
地域包括支援センターは、次のことは行いません。混同すると相談がかみ合わなくなるため、先に押さえておきます。
- 運転を続けてよいか・やめるべきかの判定 … これは家族と本人が決めることであり、運転に支障があるかどうかの専門的な相談先は都道府県警察の安全運転相談窓口です
- 認知症かどうかの診断 … 診断は医師・医療機関の役割です
- 免許の更新手続き・返納手続きそのもの … 手続きは警察署・運転免許センターで行います
できること(暮らしと制度の支援)
一方で、地域包括支援センターは運転の「前後」にある生活と制度の部分で力になれます。具体的には次のような支援です。
- 返納後の生活設計を一緒に考える … 車をやめたあとの通院・買い物・外出をどう確保するか、地域の移動支援やサービスを一緒に検討する
- 見守りや介護の相談 … 物忘れや生活の変化が気になる場合に、見守り体制や介護保険の利用を検討する
- 適切な専門機関への橋渡し … 認知症が心配なら認知症疾患医療センターやかかりつけ医、運転の可否が心配なら警察の相談窓口へ、と必要な窓口につなぐ
- 家族の不安そのものへの相談対応 … 「どう声をかければいいか分からない」という家族側の悩みも相談できる
とくに「専門機関への橋渡し」は重要です。厚生労働省の認知症相談の案内でも、地域包括支援センターは「保健医療・介護に関する相談を行うほか、相談内容に応じて、認知症に詳しい認知症疾患医療センターや認知症初期集中支援チームなどの関係機関とも連携する」と説明されています(厚生労働省「認知症に関する相談について」)。つまり、「どこに相談すればいいか分からない」状態のとき、最初の入口として使い、そこから必要な専門窓口へ案内してもらえるのが、このセンターの大きな価値です。
連携先のイメージをもう少し具体的にすると、次のような形になります。相談の内容によって、どこへつなぐかが変わります。
- 物忘れや言動の変化が気になる … かかりつけ医、認知症疾患医療センター、認知症初期集中支援チームなど医療側へ
- 運転を続けて大丈夫か専門的に相談したい … 都道府県警察の安全運転相談窓口(#8080)へ
- 通院・買い物の足がなくなる … 地域の移動支援、福祉サービス、生活支援の担当部署へ
- 独居で日常生活に不安がある … 見守りサービス、配食、介護保険の利用検討へ
家族だけだと「この心配はどの窓口に持ち込めばいいのか」が分からず時間を浪費しがちですが、地域包括支援センターを起点にすれば、複数の心配ごとを一度に整理し、それぞれ適切な行き先へ振り分けてもらえます。とくに親と離れて暮らしていて、平日に何度も役所をまわれない場合、入口を一つにまとめられる意味は大きいといえます。
運転の可否そのものを相談したいときは
「運転を続けて大丈夫か」を専門的に相談したい場合は、都道府県警察の安全運転相談窓口(全国統一ダイヤル #8080)が用意されています。警察庁によれば、高齢ドライバーやそのご家族が、看護師等の医療系専門職員に相談でき、加齢に伴う身体機能の低下を踏まえた安全運転の助言のほか、自主返納制度や運転経歴証明書、各種支援施策の案内を受けられます(警察庁「安全運転相談窓口について」)。運転そのものの相談は #8080、返納後の暮らしや介護は地域包括支援センター、と使い分けると整理しやすくなります。運転そのものの相談先のくわしい使い方は、運転の相談先をまとめた記事もあわせてご覧ください。
自分の地域の担当センターの探し方
地域包括支援センターは、住所によって担当エリア(圏域)が決まっています。隣町のセンターではなく、親が住んでいる地域の担当センターに相談するのが基本です。探し方は次の3つが確実です。
- 市区町村の窓口に問い合わせる … 役所の高齢者福祉担当課・介護保険課に「親の地域の地域包括支援センターを教えてほしい」と聞けば、担当センターを案内してもらえます
- 自治体の公式サイトで調べる … 多くの市区町村が、地域包括支援センターの一覧と担当エリアをホームページで公開しています
- インターネットで検索する … 「地域包括支援センター + お住まいの市区町村名(または地名)」で検索すると見つかります
名称は自治体によって異なる場合があります。「高齢者あんしん相談センター」「おとしより相談センター」など独自の呼び名を使っている地域もあるため、見つからないときは役所に電話で確認するのが早道です。離れて暮らす親の場合は、親が住む市区町村の窓口に問い合わせる点に注意してください。
費用・対象・受付時間の確認のしかた
相談料は無料が基本ですが、その後に介護保険サービスなどを利用する段階になれば、サービスに応じた自己負担が発生する場合があります。「相談そのもの」と「利用するサービス」を分けて考えておくと混乱しません。あらかじめ確認しておくとよいのは、次の3点です。
- 対象範囲 … おおむね65歳以上とその家族が目安ですが、年齢や対象の運用は自治体ごとに異なります。心配な場合は「家族が、親のことで相談したい」と最初に伝えれば対象かどうかを教えてもらえます
- 受付時間と予約の要否 … 平日日中が中心です。来所前に電話で受付時間と、予約が必要かどうかを確認しておくと、二度手間を防げます
- 相談方法 … 来所・電話のほか、状況によっては自宅への訪問に対応するセンターもあります。本人が外出を嫌がる場合は、訪問が可能かどうかも聞いてみるとよいでしょう
いずれも全国一律ではないため、最終的な可否や条件はお住まいの自治体(親の住所地の市区町村)で確認してください。
相談前に整理して持っていく情報
相談をスムーズに進めるには、事前に状況を整理しておくと効果的です。口頭で一から説明するより、メモにまとめて持参するほうが、職員も状況を把握しやすく、的確な提案につながります。次の項目を整理しておきましょう。
比較表を開く(6項目)
| 整理する項目 | 具体的に書き出すこと |
|---|---|
| 本人の基本情報 | 年齢、同居か独居か、家族構成、住んでいる地域(市区町村) |
| 運転の状況 | 運転の頻度、主な用途(通院・買い物など)、ヒヤリとした出来事の有無と時期 |
| 気になる変化 | 物忘れ・道に迷う・約束を忘れるなど、いつ頃から、どんな場面で気づいたか |
| これまでの経緯 | 家族で運転について話したか、本人の反応、かかりつけ医の有無 |
| 家族側の事情 | 送迎にどこまで対応できるか、相談に来られる家族は誰か、何に一番困っているか |
| 聞きたいこと | 返納後の移動手段、見守りの方法、どの窓口に行けばいいか、など質問を箇条書きに |
すべてを完璧に埋める必要はありません。分かる範囲で構いません。とくに「いつ頃から、どんな変化に気づいたか」という時系列のメモは、専門職が状況を判断するうえで役立ちます。日々の様子を簡単に記録しておくと、相談のときにそのまま使えます。
持ち物としては、本人の健康保険証や介護保険被保険者証(持っていれば)、お薬手帳などがあると、医療や介護の話に進んだときにスムーズです。ただし、初回は手ぶらで「とりあえず相談だけ」でも問題ありません。
イメージしやすいように、メモの一例を挙げます。「父・80歳・地方都市で母と二人暮らし。週2回、自分で運転して総合病院へ通院。半年ほど前から、駐車場で停める位置を間違える・同じ話を繰り返すことが増えた。先月、自宅近くの交差点で出会い頭になりかけたと母から聞いた。本人は『まだ大丈夫』と運転をやめる気はない。私は車で1時間半の距離に住んでおり、毎回の送迎は難しい。知りたいのは、運転をやめた場合の通院手段と、物忘れをどこに相談すればよいか」——このくらい具体的だと、職員も状況をつかみやすく、その場で次の一手を示しやすくなります。
相談の流れと、対応してくれる専門職
地域包括支援センターには、複数の専門職がチームで配置されており、運転と生活にまたがる相談に対して、それぞれの立場から対応します。厚生労働省の資料でも、保健師等・社会福祉士等・主任ケアマネジャー等の三職種が配置されると示されています。
対応してくれる専門職
| 専門職 | 主に対応する領域 |
|---|---|
| 保健師(または看護師) | 健康・医療面の相談、物忘れなど体調の変化への助言、医療機関との連携 |
| 社会福祉士 | 制度の案内、権利擁護、生活上の困りごとや家族関係の相談 |
| 主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員) | 介護サービスの調整、ケアマネジメント、地域の支援体制づくり |
「運転をやめたあとの通院をどうするか」という相談は、健康面では保健師、制度や移動支援では社会福祉士、介護が絡めば主任ケアマネジャー、というように、複数の視点から一度に検討してもらえるのが特徴です。
相談から支援までの流れ
一般的な流れは次のようになります。自治体によって運用は異なるため、目安として参考にしてください。
- 1. 連絡・予約 … 電話または来所で「親の運転や生活が心配」と伝える。家族だけでも可
- 2. 状況の聞き取り … 持参したメモをもとに、本人の状況・家族の困りごとを共有する
- 3. 課題の整理と提案 … 返納後の移動手段、見守り、介護保険の利用可否などを一緒に整理し、必要な支援を提案してもらう
- 4. 専門機関への連携 … 認知症が心配なら医療機関、運転の可否なら警察の相談窓口など、必要に応じて適切な窓口を案内してもらう
- 5. 継続的なフォロー … 介護サービスの利用や見守り体制づくりへと話が進む場合は、その後も継続して相談できる
一度の相談ですべてが解決するわけではありませんが、「次に何をすればいいか」が見えるだけでも、家族だけで抱え込んでいた状態からは大きく前進します。
「返納後の生活」を具体的に詰めておく
運転をやめる・やめないの結論を急ぐ前に、「やめたとしたら、暮らしはどう変わるか」を具体的に描いておくと、本人も家族も冷静に判断しやすくなります。地域包括支援センターでは、通院・買い物・外出といった生活の場面ごとに、地域で使える移動手段や支援を一緒に整理してもらえます。
あわせて知っておきたいのが、運転免許を自主返納した人が申請できる運転経歴証明書です。これは運転経歴を証明する書類で、更新不要の本人確認書類としても使えます。さらに、地域によっては、この証明書の提示でバス・タクシーなど公共交通の運賃割引や、協賛店での特典を受けられる支援制度が用意されています(警視庁「高齢者運転免許自主返納サポート協議会加盟企業・団体の特典一覧」)。特典の内容や有無は地域によって大きく異なるため、具体的な制度はお住まいの自治体や都道府県警察で確認してください。なお、運転経歴証明書の交付や手続きそのものは警察の窓口で行うもので、地域包括支援センターは「返納後の暮らしをどう組み立てるか」という生活設計の面で相談に乗る役割です。返納後の通院や見守りの整え方は、それぞれを詳しく扱った記事もあわせて参考になります。
よくある質問
親が「相談されている」と知ったら怒りそうです。本人に内緒で相談できますか
家族だけで相談に行くことは可能です。多くのセンターは、家族からの心配ごとの相談を日常的に受けています。ただし、その後に具体的な支援(介護サービスの利用など)へ進む段階では、本人の意向確認が必要になる場面も出てきます。まずは家族の不安を整理し、どう本人に切り出すかも含めて職員に相談してみるとよいでしょう。本人を交えた話し合いの進め方は、家族会議のまとめ方を扱った記事も参考になります。
「まだ運転できているのに相談するのは早すぎる」と言われませんか
早すぎるということはありません。むしろ、心配が芽生えた早い段階で一度つないでおくことが推奨されます。深刻になってから慌てるより、元気なうちに地域の窓口とつながり、返納後の生活のイメージや使える支援を知っておくほうが、本人も家族も納得して選択を進めやすくなります。
地域包括支援センターに行けば、運転をやめさせてもらえますか
いいえ。地域包括支援センターが運転をやめさせたり、免許の可否を判断したりすることはありません。運転を続けるかどうかは、最終的に本人と家族が決めることです。センターができるのは、判断のための情報を整理し、やめたあとの生活を支える方法を一緒に考え、必要な専門機関につなぐことです。運転に支障があるかどうかの専門的な相談は警察の安全運転相談窓口(#8080)、認知症の診断は医療機関、と役割が分かれています。
相談したら、必ず介護サービスを使わなければいけませんか
いいえ。相談したからといって、何かの契約やサービス利用を強制されることはありません。情報を聞くだけ、現状を整理するだけ、という使い方でまったく問題ありません。相談は無料です。
離れて暮らしていますが、遠方の親のことも相談できますか
できます。その場合は、自分の住む地域ではなく、親が住んでいる市区町村の地域包括支援センターが担当窓口になります。まずは親の住所地の役所(高齢者福祉担当課)に問い合わせて、担当センターを確認してください。電話相談に対応しているセンターも多いため、帰省のタイミングを待たずに相談を始められます。
認知症かどうか、その場で調べてもらえますか
地域包括支援センターは診断を行う場所ではありません。物忘れなど気になる様子を伝えると、必要に応じてかかりつけ医や認知症疾患医療センターなど、診断ができる医療機関や専門チームにつないでもらえます。診断は医師・医療機関の役割であり、センターはそこへ橋渡しをする入口、と整理しておくとよいでしょう。本人が受診を嫌がる場合の進め方についても、相談に乗ってもらえます。
相談したことが本人や近所に伝わって、トラブルになりませんか
相談窓口には守秘の考え方があり、相談内容がむやみに外部へ伝わることは想定されていません。家族が相談に行ったことが近所に広まる、といった心配は基本的に不要です。不安な点があれば、相談の最初に「本人にはまだ伝えていない」「どこまで本人に話すかを一緒に考えたい」と率直に伝えておくと、その前提で対応してもらえます。
まとめ:地域包括支援センターは「運転をやめたあと」を支える最初の入口
親の運転に不安を感じたとき、地域包括支援センターは「運転の可否を判定する場所」ではなく、「運転をやめたあとの暮らしをどう支えるか」「どの専門機関につなげばよいか」を一緒に考えてくれる、地域の総合相談窓口です。市町村が全国に設置しており、要介護認定がなくても、本人が行かなくても、無料で相談できます。
運転そのものの相談は警察の安全運転相談窓口(#8080)、認知症の診断は医療機関、という役割分担を押さえたうえで、「どこに相談すればいいか分からない」という最初の一歩を、地域包括支援センターから踏み出してみてください。早い段階でつないでおくほど、本人も家族も選べる道が広がります。
参考にした公的情報
確認日:2026年6月28日
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執筆・編集:親の運転相談室 運営者
本記事は一般的な情報整理を目的としており、専門資格者による個別の監修は受けていません。具体的な手続き・制度・診断・運転可否の判断は、各公式窓口や専門機関でご確認ください。

