「高齢者の運転免許の検査が、これから厳しくなるらしい」——そんなニュースを見て、胸がざわついた方へ。この記事は、これから75歳以上の免許更新を迎えるご本人と、その運転を気にかけるご家族に向けて書いています(制度の見直しがご本人にどう関わるかを中心に、ご家族が支えるための視点も添えます)。
先に、いちばん大事なところをお伝えします。
- 2026年6月25日に警察庁が発表したのは「運転技能検査の内容を見直す方向で検討を始める」という段階の話で、具体的な制度はまだ決まっていません。方向性がまとまるのは2026年8月ごろの予定です。
- 今回の見直しは「高齢者だから一律に厳しくする」という話ではありません。きっかけは、「今の検査に合格した人の中にも、その後の事故が多い層が残っていた」という警察庁の追跡調査です。つまり、”危ない人を見抜けるように”検査を作り直す、という趣旨です。
- ですから、いま慌てて何かをする必要はありません。ただ、「合格=安全」ではないという事実は、ご本人にとってもご家族にとっても、今から運転を見直す良いきっかけになります。
以下では、何が発表されたのか(経緯)/なぜ見直すのか(背景)/今後どう変わる可能性があるか/そのために今から技能をどう保つかを、公的情報をもとに順に整理します。最後に、更新に不安があるときの自己点検リストと相談先もまとめます。
まず何が発表されたのか(2026年6月25日・警察庁)
2026年6月25日、警察庁は、75歳以上で一定の違反歴がある人が対象の「運転技能検査」について、検査内容の見直しを検討すると発表しました。あわせて、検査に合格した高齢ドライバーのその後を追った初めての追跡調査の結果を公表しています。
警察庁は有識者による検討会を設け、2026年8月ごろをめどに、見直しの方向性をまとめる方針です。
ここで押さえておきたいのは、現時点では「方向性を検討する」段階だということです。検討会の報告書がまとまり、その後に制度改正や施行の手続きが必要になるため、実際に検査のやり方が変わるのは、さらに先になります。いま免許更新を控えている方は、当面は現行の制度で受けることになります(最新の扱いは、お住まいの都道府県警察の公式情報と、届いた通知書で必ず確認してください)。
そもそも「運転技能検査」とは(現行制度のおさらい)
見直しの話を理解するために、まず今の制度を整理します。高齢ドライバーの免許更新は、年齢と違反歴によって、次の3段階に分かれています。
| 対象 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 70歳以上 | 高齢者講習 | 原則として合否で落とす試験ではなく「講習」。座学・運転適性検査・実車指導などを受けます。 |
| 75歳以上 | 認知機能検査 | 記憶力・判断力を確認する簡易検査。16枚の絵を覚えて答える検査と、年月日・曜日・時刻を答える検査です。 |
| 75歳以上で一定の違反歴あり | 運転技能検査 | 更新前おおむね3年間に、信号無視・速度超過・歩行者妨害など一定の違反がある人が対象。合格しないと免許を更新できません。 |
このうち今回見直しの対象になっているのが、いちばん下の運転技能検査です。2022年に導入された比較的新しい仕組みで、教習所などのコース内で行う100点満点の減点方式の実車試験です。指示された速度での走行、一時停止、右左折、信号の通過、段差の乗り上げなどを行い、普通第一種免許は70点以上、第二種免許は80点以上で合格とされています。
つまり現行制度は、「認知機能の簡易な確認」と「コース内での基本操作の確認」が中心です。これ自体は必要なものですが、実際の事故で問題になりやすい交差点での見落とし、歩行者・自転車の発見の遅れ、複雑な道での判断力の低下まで測り切れているか——そこに、今回の調査は疑問を投げかけました。
なぜ見直すのか——「合格しても事故が減っていない」という調査結果
見直しのいちばんの理由は、警察庁が初めて行った追跡調査の結果です。ここが今回の核心なので、少していねいに見ていきます。
警察庁は、2023年5月〜8月に運転技能検査に合格した5,270人と、違反歴がなく通常の高齢者講習を受けた8,233人について、その後の2年間の事故・違反を追いました。すると——
免許保有者10万人あたりの事故・違反の件数は、検査に合格した人のほうが約2.8倍多く、75〜79歳に限れば約4.5倍もの差がありました。
本来、検査は「危ない運転を見つけて事故を防ぐ」ためのものです。ところが、その検査に合格した人のほうが、その後の事故・違反が多かった。これは「今の検査では、本当にリスクの高い人を十分にふるい分けられていないのではないか」という問題を示しています。
さらに象徴的なのが、次の数字です。
検査合格後に事故を起こした人(81人)のうち、50.6%は「満点」で合格していました。
コース内の基本操作は完璧にこなせても、実際の道路での事故は起きている。事故のときの主な違反は安全運転義務違反が約64%を占め、その中でも「安全不確認」が目立ちました。コースをきれいに走れることと、実際の交差点で歩行者や自転車を見落とさないことは、別の能力だということです。
加えて、運転技能検査の合格率は約93%(2025年は受検15万6,513人)と高く、「対象になっても、ほとんどの人はそのまま通る」状態でした。合格率が高い一方で合格後の事故が減っていない、という点も、見直しの背景になっています。
背景にはもう一つ、高齢化の進行があります。内閣府の高齢社会白書によると、65歳以上人口は2024年時点で3,624万人(高齢化率29.3%)、75歳以上は2,078万人(総人口の16.8%)に達しています。今後も75歳以上のドライバーは増えていくため、今の仕組みのままでは、更新の現場も交通安全も、負担が大きくなっていくと見込まれています。
今後、検査はどう変わる可能性があるか(あくまで”可能性”)
くり返しになりますが、正式な変更内容はまだ決まっていません。ただ、警察庁が「検査内容を充実させる」と明言していること、そして海外の制度の方向性を踏まえると、次のような変更が話題になりやすいと考えられます。以下は確定した内容ではなく、議論されうる方向の整理として読んでください。
| 項目 | 現状 | 今後あり得る方向(未確定) |
|---|---|---|
| 対象者 | 75歳以上で一定の違反歴がある人 | 対象年齢や条件の見直し、リスクの高い人への対象拡大 |
| 実車検査 | 教習所コース内の基本課題が中心 | 交通量のある場面、歩行者・自転車への対応、交差点の右左折など、実際の道路に近い場面の評価 |
| 採点 | 減点方式(70点/80点以上で合格) | 歩行者妨害や重大な安全確認ミスなどを、より重く扱う運用 |
| 認知面 | 記憶・時間の見当識の簡易検査 | 危険予測や注意の配分など、運転に直結する力の確認 |
| 医学的確認 | 認知症のおそれがある場合に医師の診断へ | 視力・視野・服薬・身体機能などをより広く確認 |
| 免許の扱い | 合格できなければ更新不可 | サポートカー限定・昼間限定など、条件付き免許の活用拡大 |
特に強化されやすいとみられるのが、「安全確認」と「危険予測」です。今回の調査で「満点合格者でも事故を起こしていた」ことが分かった以上、単純なコース走行だけでなく、”実際の道路で危険を避けられるか”を見る方向に寄っていくのは自然な流れです。
海外では、どうしているか
高齢ドライバーの免許更新が厳しいとされる国・地域は、実は「難しい筆記問題を解かせる」ようなことはしていません。共通しているのは、更新の間隔を短くする/医師の確認を入れる/視力・認知をチェックする/実際の道路に近い運転評価を行う/条件付きの免許を活用する、という組み合わせです。
- ニュージーランド:75歳・80歳、その後は2年ごとに更新。更新時に医師の診察を受け、必要と判断されれば実際の道路での安全運転評価を受けます。
- オーストラリア(ニューサウスウェールズ州):75歳以上は毎年の医学的評価、85歳以上は2年ごとに実地の運転評価が必要とされています。
一方で、「年齢だけを基準にした一律の評価は、安全効果がはっきりしない、あるいは逆効果になりうる」という研究上の指摘もあります(欧州の交通安全資料)。つまり、合理的なのは年齢だけで区切ることではなく、年齢・違反歴・認知機能・体の状態・実際の運転ぶりを組み合わせて見るやり方だと考えられます。今回の日本の見直しも、この「リスクに応じて見る」方向を向いているといえます。
(※海外の制度は頻繁に変わります。ここでは方向性の参考として挙げています。正確な内容は各国の公式情報でご確認ください。)
いちばん大事なこと——今から「技能」をどう保つか
ここからが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。制度がどう変わるにせよ、今回の調査が突きつけたのは「コース内の操作が上手でも、実際の道路での安全確認・危険予測が弱ければ事故は起きる」という事実でした。裏を返せば、ここを意識して鍛えれば、検査の合否とは関係なく、事故そのものを遠ざけられるということです。今日から始められることを挙げます。
- 「合格=安全」という思い込みを、いったん外す。 満点で合格した人も事故を起こしています。「自分は大丈夫」ではなく「自分も見落とすかもしれない」から始めるのが、いちばんの安全装置です。
- 安全確認を”声に出す・指をさす”。 交差点、右左折、発進の前後で、「右よし、左よし、後方よし」と声に出す。バスやタクシーの運転士が指差し確認をするのは、それが見落としを確実に減らすからです。ひとりの運転でも効果があります。
- 「だろう運転」を「かもしれない運転」に変える。 「来ないだろう」ではなく「子どもや自転車が飛び出すかもしれない」。危険予測は、意識すれば誰でも鍛えられます。ヒヤッとした場面を、その日のうちに一度思い返すだけでも違います。
- 教習所の「高齢者向けの実車講習」や「ペーパードライバー講習」を、任意で受けてみる。 更新のためだけでなく、自分の運転を専門の指導員に客観的に見てもらう機会として使えます。「クセ」は自分では気づけません。
- ドライブレコーダーで、自分の運転を後から見返す。 交差点の入り方、一時停止の止まり方、車間。録画を見ると、「意外と止まりきれていない」ことに自分で気づけます。家族と一緒に見るのも良い方法です。
- 体・目・薬を整える。 視野の狭まり(緑内障など)や白内障、複数の薬の影響は、自分では自覚しにくいものです。かかりつけ医や眼科に、「運転を続けたいので確認したい」と相談してみてください。
- 運転する”範囲”を、自分で設計する。 夜間・雨の日・慣れない道・長距離など、負担の大きい条件を避け、「調子よく運転できる範囲」に自分でルールを決める。これは技能を補う、立派な安全対策です。
- サポートカー(安全運転サポート車)という選択肢を知っておく。 自動ブレーキやペダル踏み間違い時の加速抑制がついた車は、とっさのミスを機械が補ってくれます。普通免許を「サポートカー限定」にする制度もあります。技能を”道具”で支える考え方です。
- 迷ったら、警察の安全運転相談ダイヤル「#8080(シャープハレバレ)」へ。 運転を続けてよいか不安なとき、免許や返納のことを相談したいとき、ご本人からもご家族からも相談できます。密告のような窓口ではなく、安全のための相談先です。
ご家族へ:この場面で大切なのは、「取り上げる」ではなく「一緒に点検する」姿勢です。頭ごなしに免許を止めようとすると、話は感情のぶつかり合いになりがちです。ドライブレコーダーを一緒に見る、医師への相談に付き添う、#8080に一緒に電話する——本人が主役のまま、外の手を借りていくのが、いちばん進みやすい道順です。
見直しで注目される「安全確認」を、今すぐ家で試せます(新種目を追加しました)
今回の調査が突きつけたのは、「コース走行の上手さ」ではなく「安全確認」の弱さでした。そこで当サイトの無料体験ナビに、これを家で試せる新種目「🔍 安全確認の順番」を追加しました。
- 乗りこむ前のひと回り(車の直前直後の死角)
- 一時停止のあと、動き出す直前の「もう一度右・左」
- ゆずられた右折(対向車のかげのバイク——いわゆるサンキュー事故)
- 左折の巻き込み確認(ミラー+目視)
- 車線変更の死角(肩ごしの目視)
- 青信号でも左右に目を配る
——事故統計で実際に問題になった場面ばかりを、絵を見て「どこを・いつ確認するか」を選ぶ5問にしました。スマホでもパソコンでもでき、登録は不要です。既存の「危険予測クイズ」「周辺の気づき」と合わせて使うと、検査の内容がこれからどう見直されても土台になる「見る習慣」の練習になります。
新種目「安全確認の順番」を無料で試す(登録不要) ※公式検査ではありません。免許更新の合否・認知症の診断・運転可否を判定するものではなく、制度と流れの理解や、確認の習慣づくりのための無料体験コンテンツです。
結果はご本人だけでなく、ご家族が「一緒に点検する」きっかけとしても使えます。まず一度、ご自身で5問試してみてください。
更新に不安があるとき、今日できる自己点検リスト
「自分は技能検査の対象になるのか」「何を準備すればいいのか」——不安を、今日できる具体的な行動に変えるためのリストです。全部できなくても構いません。
- 届いた通知書で、自分が受けるのが高齢者講習・認知機能検査・運転技能検査のどれか(対象区分)を確認する
- 過去3年ほどの違反を思い出して、紙に書き出してみる(技能検査の対象かの目安になります)
- かかりつけ医に、体調・薬・視力・視野の相談を予約する
- 最近ヒヤッとした場面を一つ、家族に話してみる
- お住まいの都道府県警察の公式ページで、最新の更新手続き・予約方法を確認する
- 運転に不安があれば、#8080に電話して相談してみる
制度の流れや検査の雰囲気を先に知っておきたい方は、当サイトの無料コンテンツで予習できます。
75歳以上の免許更新・認知機能検査の流れを見る(無料) ※これは公式検査ではありません。免許更新の合否・認知症の診断・運転可否を判定するものではなく、制度と流れを理解するための無料の体験・整理コンテンツです。実際の手続きは通知書と都道府県警察の公式情報をご確認ください。
自分がまだ運転を続けてよいか、客観的な目安がほしい方は、こちらも参考になります。
親の運転・免許返納 無料セルフチェックを試す ※返納の可否を判定するものではなく、相談を急いだ方がよいかの目安を整理するためのセルフチェックです。
相談先(公的な窓口)
制度・検査・運転の不安は、次の公的な窓口に相談できます。ひとり(あるいは家族だけ)で抱え込まないことが大切です。
- 安全運転相談ダイヤル #8080 —— 運転に不安のある高齢ドライバー本人と、その家族のための警察の相談窓口
- お住まいの都道府県警察の公式情報・届いた通知書 —— 更新手続き・予約・対象区分の最新情報
- かかりつけ医 —— 体調・眠り・視力・薬の変化の相談から
- 地域包括支援センター —— 高齢者の生活全般の相談窓口(「お住まいの市区町村名+地域包括支援センター」で検索)
もし更新できなかったときに備えて——返納後の生活も並行して考える
検査が厳しくなる可能性を考えると、「もし更新できなかったら」を、今から少しだけ準備しておくと安心です。これは不安を煽るためではなく、いざというときに生活が止まらないようにするための、前向きな備えです。
買い物・通院・外出をどう組み直すか、車をどうするかは、別の記事でくわしく整理しています。
「運転を続けるための備え」と「もしものときの生活の備え」を、両輪で少しずつ進めておく——それが、いちばん心穏やかでいられる方法です。
よくある質問
Q. 2026年8月から、すぐに検査が厳しくなるのですか? A. いいえ。2026年8月ごろにまとまるのは「見直しの方向性(報告書)」で、そこから制度改正や施行の手続きが必要です。実際に検査のやり方が変わるのは、さらに先になります。今の更新は、現行制度で受けることになります。最新の扱いは都道府県警察の公式情報でご確認ください。
Q. 違反歴がなければ、運転技能検査は関係ありませんか? A. 現行制度では、更新前おおむね3年間に一定の違反歴がある75歳以上の方が対象です。違反歴がなければ、現時点では技能検査の対象ではありません。ただし、今回の見直しで対象の考え方が変わる可能性は議論されており、確定はしていません。
Q. 認知機能検査と運転技能検査は、同じものですか? A. 別のものです。認知機能検査は、75歳以上の方が受ける「記憶力・判断力」の簡易検査です。運転技能検査は、一定の違反歴がある75歳以上の方が受ける「実車」の検査で、合格しないと更新できません。今回見直しの対象になっているのは、後者の運転技能検査です。
(この記事は2026年7月6日時点の公的情報にもとづいて整理しています。制度・手続き・検査内容は変わることがあります。行動される前に、必ず都道府県警察などの公式情報をご確認ください。)

